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健康診断結果の「就業区分判定」を実施していますか?

健康診断結果の「就業区分判定」を実施していますか?

みなさまの会社では従業員の定期健康診断を実施していますか?
法律により1年以内ごとに1度の実施が義務付けられていますが、健診後の医師による意見聴取(就業区分判定)の実施までが義務であることはあまり知られておりません。
今回は、医師による就業区分判定にスポットを当て、なぜ実施しないといけないかその理由、就業区分判定を行わないことで生じるリスク、就業区分判定の流れなど詳しく解説いたします。

就業区分判定の重要性 なぜ就業区分判定を実施しないといけないか

就業区分判定を実施しないことによって生じるリスクはいくつかあります。
日本の労働環境では労働者の健康と安全を守るために、産業医が健康診断後に実施する就業区分判定が重要な役割を果たしています。就業区分判定をなぜ実施しないといけないのでしょうか?その理由を3つの観点から説明致します。

理由その① 従業員の健康確保のため

 皆様の職場において一緒にお仕事をされる従業員様、あるいは役員の方が突然倒れて出社出来なくなった、という事態に遭遇されたご経験はおありでしょうか。脳や心臓疾患を発症し、不幸にして命を落とされるケースもあるかと思います。

弊社にも稀にそのようなご報告が入る事がございます。その際に私共が確認することは「定期健康診断は受診されていたか」「健診後の就業区分判定は実施されていたか」という事です。
定期健康診断は受診しているものの、医師による意見聴取(就業区分判定)を実施していなかった、または「早急に医療機関を受診するように」という産業医の指示が出ているのに受診せず、放置してしまったために症状が悪化し突然発症した。このような残念な報告を受けますと、就業区分判定の重要さについて改めて考えさせられます。

国が定める「定期健康診断」の項目には、突然死や労働災害を未然に防ぐための重要な項目が含まれております。 項目ごとの目的(予防が期待できる疾病)について整理してみましょう。
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・ 血圧測定 … 脳卒中、心筋梗塞、腎不全など
・ 胸部X線 … 肺がん、結核など
・ 心電図検査 … 狭心症、心筋梗塞、心不全などの循環器系疾患
・ 血糖値、HbA1C、尿糖 … 糖尿病、さらに合併症として網膜症からの失明、腎症からの人工透析、神経障害など
・ 血中脂質値 … 動脈硬化による心筋梗塞、脳卒中など
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健診結果は産業医などの専門家が確認し、リスクを評価して「通常勤務可」「要医療」「要就業制限」「要休業」いずれかの判定を行う必要があります。
そして異常所見が見つかった場合、その内容や程度によって働き方への配慮が求められます。

理由その② 経営者のリスクヘッジとして

たとえば、運転免許証を毎年確認せず社用車を運転させていた従業員がいたとします。
たまたま交通事故を起こして相手に大けがをさせてしまったので、警察が調べたところその従業員は運転免許の更新を怠り免許失効状態だった。
相手方はその従業員だけでなく、無免許状態で社用車を使用させていた経営者に対しても損害賠償等の訴えを起こすでしょうし、経営者はその責任を逃れることは出来ないと思います。

それと同じことが定期健康診断でも起きます。
健康診断後の就業区分判定を怠り、本来は健康な従業員より多くの仕事をさせてはいけないレベルの従業員に(言いかえれば、毎年の仕事免許の確認をしないまま)仕事をさせてしまい、倒れたり亡くなったりした場合の経営者のリスクを減らすための制度でもあるのです。
実際に企業側の健診後の対応が悪くて東京高等裁判所から3,200万円の損害賠償支払い判決を受けた判例もあります。

経営者のリスクを減らすために、日本産業医支援機構では就業区分判定と合わせて、精密検査や治療のための医療機関受診を促す書類(受診勧奨レター)を用意しています。
これは、会社側と相談して作成するいわば「イエローカード」ともいえる書類で、例えば、このまま精密検査を受けなければ来月からは残業禁止や出張禁止などのドクターストップに移行するという内容です。


理由その③ 法令で定められているため

労働安全衛生法で事業者に義務付けられている以上、実施していない場合には法令違反となり、労働基準監督署から 是正勧告などの行政指導を受けます。

・労働安全衛生法の違反: 労働安全衛生法には、産業医による健康診断の実施義務や、その結果に基づく適切な措置の講じる義務が明記されています。就業区分判定を怠ることは、この法律に違反する行為となります。

・労働基準法の違反: 労働基準法には、労働者の健康と安全を守るために適切な措置を講じることが求められており、これに違反する可能性があります。

就業区分判定を怠ることで生じるその他のリスク

就業区分判定は、労働者の健康と安全を確保するための重要なプロセスです。
これを怠ることで、法令違反となり、罰則や企業の信頼失墜など多くのリスクが生じる可能性があります。
企業は労働安全衛生法に基づいて適切な健康管理を行い、従業員の健康と安全を守ることが求められます。

労働者の生産性低下

健康状態に不適切な業務
健康に不適切な業務を割り当てた場合、労働者のパフォーマンスが低下し、生産性が損なわれるリスクがあります。
これにより、業務の効率が悪化し、企業の競争力にも影響を及ぼします。

労災の増加

事故や健康問題の発生
健康診断や就業区分判定が不十分なまま業務を行うことで、労働災害や労働者の健康問題が増加する可能性があります。
特に、身体的な負荷が大きい業務や危険を伴う業務に従事する場合は、深刻な結果を招くことがあります。

法的および社会的責任の問題

社会的信頼と企業の評判
社会的に責任ある企業としての評判が損なわれる可能性があります。労働者の健康と安全を無視した結果、企業の責任を問われることがあります。
外部からの信頼を失う可能性があります。特に、労働環境が悪いという評判が広まると、優秀な人材の採用が難しくなることがあります。


従業員のモラル低下

健康管理が適切に行われていない企業では、従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下することがあります。
これにより、離職率の上昇や社内の士気低下が発生する可能性があります。

経済的リスク

健康問題が原因で長期休職や離職が増えると、その穴を埋めるためのコスト(採用費用、訓練費用など)が発生します。また、労働災害が発生した場合には、補償費用や罰金などの経済的負担も大きくなります。

コミュニケーションの悪化

健康問題を抱えた従業員が業務を続けることで、同僚や上司とのコミュニケーションが滞ることがあります。これにより、チーム全体の連携が悪化し、プロジェクトの進行にも支障をきたすことがあります。

就業区分判定のプロセス

企業は従業員の健康を管理し、適切な就業環境を提供することが求められます。
健康診断から就業区分判定までのプロセスをしっかりと行うことで、従業員の健康と安全を確保し、企業の持続可能な発展に貢献することができます。

①健康診断結果の収集

健康診断を実施し、その結果を収集します。これには、労働者の各種検査結果が含まれます。

②結果の評価

健康診断結果を産業医や契約医師に提出し、専門的な評価を受けます。
必要に応じて、追加の検査や専門医の受診を指示されることがあります。

③面談の実施

特に事後指導が必要な場合に限り労働者との面談を実施し、健康状態や職務内容について詳しく話し合います。

④就業区分の判定

健康診断の結果と面談の情報を基に、労働者が現在の業務を続けることができるかどうかを産業医または医師が判定します。以下のような結論が出されます。

通常勤務可:健康状態に問題がなく、現在の業務を続けられる。
要医療:直ちに専門医療の受診をする必要がある。
要就業制限:一部の業務に制限が必要。特定の条件下でのみ就業可能。
 長時間労働や肉体的な負荷が大きい作業を避ける必要がある場合。
 (例:業務内容の一部変更、労働時間の短縮)
要休業:現在の業務を続けることが健康に悪影響を及ぼすため、就業を控える必要がある。

⑤フィードバックと措置

判定結果を労働者と企業にフィードバックし、必要な措置を講じます。
例えば、業務内容の変更、休職の勧告、定期的な再評価などです。

日本産業医支援機構の就業区分判定サービス

就業区分判定を怠ることで生じるリスクは多方面にわたります。
企業は従業員の健康と安全を確保し、持続可能な運営を行うために、定期的な健康診断とその結果に基づく適切な就業区分判定を行うことが重要です。

日本産業医支援機構では、医師による就業区分判定、2次検査などの受診勧奨文書の作成などを全国の小規模事業者様に廉価で提供しております。興味をお持ち頂いた方、実施を検討しているが具体的な進め方がわからない等ございましたら、是非、日本産業医支援機構までお問い合わせ下さい。

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