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【ブログ】高年齢労働者の増加に伴う企業の対応について

【ブログ】高年齢労働者の増加に伴う企業の対応について

近年の労働人口の減少に伴い、企業の人材難が深刻な問題となっています。

企業では様々な立場の採用者を獲得していかなければならない状況の中、就労の支援をしていかなければ成り立たないものの一つに「高年齢労働者」があります。特に中小企業では、定年後の再雇用労働者が今まで以上に大きな戦力の一つとなっていくでしょう。

今回は企業が高年齢労働者に対しどう支援をしていけば良いかについてご紹介をします。

高年齢労働者の労災発生状況

日本の労働者の3分の1以上は50歳以上です。そして65歳以上の労働人口は912万人で全体の約13.68%を占めています。
厚生労働省の発表(令和3年 高年齢労働者の労働災害発生状況)によると、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の高齢者の割合は25.7%となっています。60歳以上で働く労働者が他の年代よりも少ないことを考え合わせると、この数字は重い意味を持つといえるでしょう。間違いなく今後はこの比率が上昇していくだろうと国もみています。

エイジフレンドリー

令和2年度の7月に行われた第93回「全国安全週間」のスローガンが「エイジフレンドリー職場へ!みんなで改善 リスク低減」でした。
エイジフレンドリーとは「高齢者の特性を考慮した」を意味する言葉で、世界保健機関(WHO)や欧米の安全衛生機関で使用されています。WHOはエイジフレンドリーシティを増やしていく取組みをおこなっており、日本では秋田市、宝塚市等の市町村が参加しています。

厚生労働省は令和2年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を公表し、今後の方向性を示しました。その内容です。

(1)安全衛生管理体制の確立等

経営トップ自らが安全衛生方針を表明し、担当する組織や担当者を指定するとともに、高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害についてリスクアセスメントを実施

(2)職場環境の改善

照度の確保、段差の解消、補助機器の導入等、身体機能の低下を補う設備・装置の導入などのハード面の対策とともに、勤務形態等の工夫、ゆとりのある作業スピード等、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理などのソフト面の対策も実施

(3)高年齢労働者の健康や体力の状況の把握

健康診断や体力チェックにより、事業者、高年齢労働者双方が当該高年齢労働者の健康や体力の状況を客観的に把握

(4)高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応

健康診断や体力チェックにより把握した個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務をマッチングするとともに、集団及び個々の高年齢労働者を対象に身体機能の維持向上に取り組む

(5)安全衛生教育

十分な時間をかけ、写真や図、映像等文字以外の情報も活用した教育を実施するとともに、再雇用や再就職等で経験のない業種や業務に従事する高年齢労働者には、特に丁寧な教育訓練を実施

高年齢者の体力チェック

60歳未満の社員の健康診断項目をそのまま高年齢労働者にあてはめても、労働災害の防止には直結しません。特に体力面でのチェックとその結果をふまえた高年齢労働者への健康教育が必要です。その一例として、日本産業医支援機構が提案する高年齢労働者の体力チェックについてご紹介します。

大企業では高年齢労働者向けに独自の体力チェック行っているところもありますが、中小企業が取り組むには機器類の費用の捻出が難しいことや専門スタッフがいないことなどを考えると、比較的安価かつ簡単に全国でどこでも実施可能で、専門家の手助けを受けることが出来る体力測定が必要です。
以下、自社でも安価で簡単に測定可能な項目を挙げさせていただきます。

 ①握力(上肢筋力)
 ②30秒椅子立上りテスト(下肢筋力)
 ③長座位体前屈(柔軟性)
 ④開眼片足立ち(平衝性)
 ⑤2ステップテスト(歩行能力)
 ⑥上体起こし(筋持久力)
 ⑦閉眼片足立ち(平衝性)
 ⑧ステッピングテスト(敏捷性)
 ⑨6分間歩行(持久力)

主にオフィスワークをする高年齢労働者の場合は①~⑤までの体力測定と問診を、主に肉体労働を行う高年齢労働者の場合は同様に①~⑨までの体力測定と問診を行うというものですが、出来るだけ測定の専門家がいる医療機関での検査とその結果についてのアドバイスを受けることをお奨めします。
もしも、自社で測定可能なスタッフや産業医がいる場合は、握力計、ストップウォッチ、ストレスマット、椅子などがあれば測定は可能です。工夫次第では、長座体前屈測定器は段ボールでも作れ、簡易的に測定することも可能です。

+問診として新体力測定で使われている ⑩健康状態のチェックテストと ⑪ADL(日常生活活動テスト)を推薦することとしました。
【一部(例)~健康ニュース2021/7月号「チャレンジ体力チェック」より】

高年齢労働者を雇用する際に気を付けたいこと

次に体力測定を含めて、高年齢労働者の採用、再雇用と労働災害の防止のために、企業・団体として取り組む手順についてご紹介したいと思います。

①(安全)衛生委員会等で高年齢労働者問題について調査・審議したうえで社内ルールの案を作成し、社長や代表と話し合って企業・団体としての方針を発表してもらう。

②担当部署を決め、リスクアセスメントを実施した後に社内向けの説明会を開催して、全体的な取組みであること、なぜ高年齢労働者の雇用と労災防止対策が必要なのか、などの説明を行う。

③産業医などにも説明し、体制が整ったら健診・測定機関を検討、交渉し、健康診断や体力測定を開始する。

④検査結果が揃ったら、本人の希望等を確認したうえで産業医や産業保健スタッフを交えて結果を共有し、人事、総務、管理監督者も加わって、適任と思える業務とのマッチングを実施する。

⑤その後も、制度の一環としてこの検討会を定期的に行い、本人の意見も取り入れ、決定事項を本人及び上司にフィードバックする。

上記の取り組み手順に沿うことで、高年齢労働者側も業務の転換などを受け入れやすくなるでしょう。
その後は、集団、及び個々の高年齢労働者を対象に、健康レベル・身体機能の向上に取り組む社内行事なども企画し、継続して行います。そして、それらの結果をマネジメントに報告し、(安全)衛生委員会などで再検討することで、さらなるレベルアップを目指していきましょう。

最後に・・・

今回ご紹介した高年齢労働者に限らず、今後の労働者数の大幅な減少の影響により、外国人労働者の活用、障害者の活用、メンタルヘルス不調者の復帰後の活用、非正規労働者や女性労働者の活用などは避けて通ることができません。様々な従業員の安全と健康を守るためにも、企業・団体の経営者、人事・労務・総務担当者は準備が必要となってきます。

もしよろしければ、知識の向上のためにも日本産業医支援機構の執行役員である佐藤典久と産業医・社労士・労働衛生コンサルタントの資格をもつ下村洋一先生による共著『健康リスクから会社を守る‼』をぜひご一読いただき、従業員の管理に役立てていただけますと幸いです。体力測定についての詳細な説明もあります。

ご相談やご質問などございましたら、お気軽にホームページまたはお電話にてお問合せください。
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